文化ジャーナル(平成15年10月号)

2003年10月1日

文化ジャーナル10月号

出版芸術社・原田裕社長とポプラ社・田中治男会長が講演
10・16徳島県読書振興大会に注目

徳島県読書振興大会は、県内の図書館のあるところで持ち回りで開催される催しである。催しの内容は開催地にすべてまかされるので担当図書館は大変であるが、そのことは一方で自由に企画立案が可能なわけであり、非常にやりがいのある仕事といえよう。今年は北島町が当番になっていて、私は思案の末に思い切りぜいたくな内容にしようと考えた。

出版芸術社の原田裕社長の話が聞きたいというプランはかなり以前に考えたことがあった。当館は1999年10月に、柴野拓美さんの講演会「日本SFを築いた人たち~SF同人誌・『宇宙塵』40年の軌跡」を開いた。柴野さんは、戦後日本SFを語るときには絶対欠かせないSF界の重鎮・大御所中の大御所プロデューサー(作家、翻訳家)であり、例えばNHKがもしも「プロジェクトX」で日本SFを特集するとしたら柴野さんと福島正実氏(『SFマガジン』初代編集長、故人)は必ずそこに登場しなければならないだろう。

SFの世界には柴野さんがいる。ならば、戦後の探偵・推理小説の分野では誰がいるだろうと考えてみると、講談社~東都書房(講談社の別会社)で意欲的な推理小説叢書をお作りになった原田裕さんが、私には思い浮かぶのである。柴野さんには『塵も積もれば』(出版芸術社)という半生記がある。同書は現場を見てきた者のみが語り得る熱い内容に満ちており、今では日本SF研究に欠かすことのできない重要な基本文献となっている。そしてミステリーの世界にも『塵も積もれば』が必要だ。それは原田さんをおいていないはずだ。私は、原田さんに戦後のミステリー界のことを書いて欲しいと以前から考えていた(手紙で提案したこともある)。インタビュー集でもよいではないか。あるいは講演会でも。私は、個人的にこんな思いを数年前から抱いていた。それ故、ぜひ創世ホールの舞台に立っていただこうと考えた。

山崎安雄『著者と出版社』(学風書院、昭和29年6月)に「ポプラ社と海野十三」という一章があって、海野十三やSF研究家には大変有名なエピソードが紹介されている。1947(昭和22)年8月ポプラ社の旗挙げ第1作が海野十三『地中魔』なのだが、これはポプラ社を久保田忠夫氏と田中治男氏が立ちあげる時に海野の厚意で提供された作品なのだ。

以下、同書から関係部分を引用する。《永いつき合いの間に、すっかり久保田さんの律儀な人柄を知った海野氏は、(略)旗上げと聞くや、その前途を祝福して百五十枚の原稿(地中魔)を欣然と提供したのだった。》《こうして生れたポプラ社の第一作が、海野十三氏の「地中魔」だった。(略)久保田さんが「内」を守り、田中君が「外」の一切を引き受けた。(略)二人は、文字通り身を粉にして働いた。これで失敗したら百姓になろう──それが互の胸に秘めた背水の陣だった。》《その年の大晦日のこと、田中君が神田辺の小さな取次店で集金してくるのを、電柱の影で久保田さんが待ち受けていた。「忘れもしません、私が集めてきた五円札、十円札を先生が数えるんです。」田中君は今でも教え子の昔通り先生と呼んでいる。》《こうしてかき集めた金をもって、久保田さんは世田谷区若林町の海野氏宅に駈けつけた。もうその夜も十時を大分まわっていた。創業間もない久保田さんの苦しい立場を知っているのでアテにもしていなかった海野氏は、玄関の畳にバラ銭を並べる久保田さんを前にして、一瞬両眼をうるませた。終戦直後の人情紙より薄い時代に、この義理固さは強く海野氏の胸を打ったようだ。》

1949(昭和24)年5月、海野十三は51歳で世を去った。ポプラ社は、その後も海野作品を刊行し続ける。何度も何度もカバーを変えて海野作品を世に送り出した。《海野氏がまだ世にある頃は、各方面から雑誌原稿や出版の申込も多かったが、いまは久保田さん以外訪う人もなく、従ってポプラ社からの印税が一家にとって唯一の財源になっている。》

ポプラ社が海野十三亡き後も、海野本を出し続けたのは、創業時の恩に報いるためにほかならなかった。疑う者は徳島中央公園にある海野十三碑の裏面を見よ。そこには石碑建立のために浄財を寄せた個人や団体の名前が刻まれている。著名なSF作家たちの名前と共にポプラ社の社名が記載されていることを人は知るだろう。久保田忠夫氏既になく、今82歳の田中治男さんがポプラ社の会長を務められている。徳島で田中さんの講演会を開き、徳島中央公園の海野碑にご案内すること。それも私の念願だった。夢に描いた2つの講演会を一挙に実現するぜいたくな催しが16日の「徳島県読書振興大会」にほかならない。今回講演会の宣伝告知のためにチラシを三千枚作った。県内の全ての図書館・教育委員会と四国の県立図書館や文学館、鳥取の「本の学校」などに送った。思いがけないことに「本の学校」代表の永井伸和さんから激励の書簡を頂戴した。謹んで転載させていただき、改めて心ある読者の皆さんの「徳島県読書振興大会」へのご支援を呼びかけるものである。

拝復。日本海の波頭日増しに高く砂丘の風紋の美しい季節となりました。
このたびは徳島県読書振興大会のご案内を本の学校にありがとうございました。北島町立図書館のユニークな取り組みの数々を伝える資料に、図書館と出版界の距離を感じる今頃、貴館の活動の素晴らしさを深く教えられます。
出版芸術社社長原田裕様、ポプラ社会長田中治男様のお二人のご講演、よくぞ実現されましたと敬服いたしています。なかでも田中会長様には、本の学校も今井書店も格別なご指導を賜わっております。ぜひ参加したいのですが、小生は、定例教育委員会(鳥取県)の当日のため残念ながら不可能です。ご案内のパンフレットを配布すると共に、小店グループ今井社長が、本の学校・今井グループを代表し参加を予定させていただきます。今井直樹社長も楽しみにしております。よろしくお伝えください。ご盛会と、貴図書館のますますのご発展ご活躍を祈っております。

敬具

二〇〇三年九月二十二日 本の学校 永井伸和

シリーズ最高記録樹立
ザ・リフィ・バンクス・トリオ公演

9月17日の「アイルランド音楽への招待/ザ・リフィ・バンクス・トリオ」は、330人の入場者があり北島トラディショナル・ナイト・シリーズの最高記録を樹立した。CDは、128枚売れた。これもシリーズ最高記録だ。ご支援いただいた皆さんに深く感謝したい。催し当日の朝、四国放送のラジオ・カーの取材を受け(私が5分ほどレポーターの人と話した)、また夕方には5時半からの四国放送テレビのニュース番組「530フォーカス」が取材にきてザ・リフィ・バンクス・トリオのリハーサル風景が約5分間生中継された。今回は四国放送さんに本当にお世話になった。

演奏曲は当日に決定するということで、当日パンフレットをどうするか、迷った。招請元の京都の熊谷亨氏のところには事前に予定曲・候補曲のリストが送られてきたので、「その日その会場にもっとも適したものが選曲されたり、追加されたりする」ということわり書きを入れて《演奏予定曲目》を掲載した。北島町創世ホール公演の当日のセットリストの手書きコピーをポールさんからいただいたので演奏曲目を以下に掲載しておく。なお、筆記体読み下しにあたっては、熊谷さんの多大なご支援を得た。感謝します。

  1. Kitty's Favourite/Pearl O'Shaughnessy's(Polkas)
  2. Down the Broom/The Stoney Steps/The Red-Haired Lass(Reels)
  3. Con Cassidy's/Jimmy Bhidi Mhici's(Waltzes) Solo-Paul
  4. Johnny Doherty's/Josie Byrne's/The Glenbeigh(Barndances)
  5. Poll Ha'Penny/The Plains of Boyle(Hoynpipes) Solo-Tara
  6. The Whinny Hills of Leitrim/Gusty's Frolics(Slip Jigs)
  7. Jackie Coleman's/The Mountain Top(Reels) Solo-Harry
  8. The Divils of the Dublin/The Mullingar Lea/Speed the Plough(Reels)
  9. Black is the Colour/The Coolin'(Air/March)
    休憩
  10. Sailors on the Rock/London Lasses(Reels)
  11. Gan Ainm(Jigs) Solo-Harry
  12. Ships are Sailing/New-Mown Meadow(Reels)
  13. The Moneymusk/Cran's(highlands)
  14. Gan Ainm Solo-Tara
  15. The Old Copper Plate/The New Copper Plate(Reels)
  16. The Boys of the Town/The Lark on the Strand(Jigs)
  17. Glen road to Carrick/Gan Ainm(Reels) Solo-Paul
  18. The Dublin Reel/The Five-Mile Chase(Reels)

アンコール The Galway Rambler/The Bucks of Oranmore(Reels)

北島CATV9チャンネルで10月24日から30日迄1日2回(?.14時~、?.20時~)ザ・リフィ・バンクス・トリオ北島公演が放送される。ご注目を!問い合わせは北島CATV(Tel088・698・0811)へ。(03・10・04脱稿/小西昌幸)

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