文化ジャーナル(平成16年8月号)

2004年8月1日

文化ジャーナル8月号

杉浦康平先生の近刊『宇宙を叩く』

2004年4月7日、杉浦康平プラスアイズ(杉浦オフィス)の佐藤篤司さんからお電話をいただいた。用件は、杉浦先生が万物照応劇場シリーズ最新刊として準備中の『宇宙を叩く』(版元工作舎)という本の中で、愛媛の大太鼓の土台の設計図面を必要としているのだが、それを入手するにはどうすればよいか、というものだった。

私は、徳島県立博物館学芸員田辺力氏(無脊椎動物担当、平成ガメラと伊福部昭の熱狂的愛好家、著書に『多足類読本』)に電話で相談した。田辺氏は「それは民俗担当になりますねえ。少し時間をください。聞いてみますよ」といった。約3時間後連絡があり、太鼓台を作っている愛媛の3業者さんの連絡先が判明した。これは、田辺氏→徳島県立博物館民俗担当学芸員氏→愛媛県立博物館学芸員氏→新居浜市役所商工観光課という複雑な過程を経てもたらされた情報だった。私は、それをそのまま佐藤さんにお伝えした。

それから約2か月後の6月、工作舎の岩下さんから電話があった。『宇宙を叩く』の近刊案内チラシを作るので、配布等で宣伝協力願えないかという内容だった。岩下さんには、創世ホールでの杉浦先生講演会の際に、同社のホームページで宣伝していただくなど随分お世話になっているので、もちろんOKだ。

7月中旬、当該チラシが到着した。次のような文章が記載されている。《杉浦康平[万物照応劇場]シリーズ最新作!/杉浦康平◎著『宇宙を叩く 火炎太鼓・曼陀羅・アジアの響き』/雷の轟音からピンが床に落ちるかすかな音まで、厚さ0.1ミリ、直径約9ミリの耳の鼓膜(イヤードラム)が聴き分ける。太鼓に似たこの小さな器官に対して、注目すべき二つの大太鼓がある。中国と韓国に現存し、中に浮く太鼓を一本の軸が貫く形の「建鼓」と、日本で生まれた右方・左方、一対の「火焔太鼓」だ。月と太陽、龍と鳳凰、さらに胎蔵・金剛の両界曼茶羅ともかさなる。アジアの図像に精通する著者の洞察が冴えわたる一冊。/A5判・上製340頁[カラー16ページ]◎予価=3500円+税》

8月末刊行予定となっているが、8月2日に電話確認したときの佐藤さんのお話では、秋ごろになるのではないか、とのことだった。また、上下2巻本の『ブック・デザインの宇宙(仮題)』も工作舎で準備中だが、まだ少し先になりそうとの由。

杉浦先生は10月5日から30日までギンザ・グラフィック・ギャラリーで、これまで手がけられた雑誌のデザイン展を開催することになっており、その図録をこれから作らねばならないということだった。杉浦先生とお弟子さん達のますますのご健勝を願ってやまない。

上方講談師・旭堂南湖同人誌創刊

創世ホール年末恒例の「忠臣蔵+探偵講談/上方講談・旭堂南湖(きょくどうなんこ)寄席」でおなじみの旭堂南湖さんから同人誌が送られてきた。『旭堂南湖同人誌vol.1 世界の中心で、講談をさけぶ』(南湖事務所、2004年7月25日)限定300部(通し番号入り)、A5判82頁、税込定価1260円。

著名な推理作家・芦辺拓先生の巻頭文にはじまり、南湖さんの面白随筆「ナンコラム」「紀行文 沖縄おもしろ話」、チラシギャラリー、藤本和也氏・森元暢之氏他の漫画など盛りだくさんの内容だ。

部数が限られているので、販売流通は大阪・名古屋・東京などの会場売りとタコシェ(東京・中野ブロードウェイ)での委託販売に限定する方針らしい。同人誌は3号まで出すということなので、12月の北島公演には、うまくゆけば販売できるでしょうとのこと。

なお、南湖さんは毎年「噺家連」で阿波踊りを踊りに徳島に来ておられる。今年も徳島入りが決まっており、私(小西)は期間中に会う約束をしているので12月の催しの打ち合わせをするつもりだ。

『海野十三戦争小説傑作集』中公文庫

2004年7月25日に、長山靖生編『海野十三戦争小説傑作集』(中公文庫、286頁、本体686円)が出た。海野が昭和12年から19年にかけて発表した戦争テーマの短編小説11編を収めている。内6編は、三一書房版『海野十三全集』未収録作品だ(「空襲下の国境線」「若き電信兵の最後」「アドバルーンの秘密」「探偵西へ飛ぶ」「撃滅 」「防空都市未来記」)。長山氏の行き届いた解説が相変らず冴え渡っている。中公文庫は昨年7月25日にも海野十三の『赤道南下』(314頁、本体686円)と、長山氏編のアンソロジー『明治・大正・昭 和 日米架空戦記集成』(海野の昭和8年発表の短編「空ゆかば」収録、292頁、本体667円)を刊行している。『赤道南下』は三一書房版『全集』では抄録、「空ゆかば」は同『全集』未収録作品だった。これらの背景には没後50年が経過したことによる著作権解除があるにせよ、全集を補完する作品集が今もなお刊行され続けることは、ファンや徳島県にとって本当にありがたいことだといえよう。関係者に深く感謝したい。

(2004・08・05脱稿/文責=創世ホール・小西昌幸)

p200408.jpg海野十三戦争小説傑作集の表紙

このページの
先頭へ