文化ジャーナル(平成18年9月号)

2006年9月1日

文化ジャーナル9月号

『まんがNo.1』の時代

長谷邦夫さん インタビュー

出■長谷邦夫(漫画家、大学講師、漫画論、栃木県在住)

席▲坂本秀童(徳島謄写印刷研究会代表、牟岐町出羽島在住)

者●小西昌幸(北島町立図書館・創世ホール企画広報担当)


長谷■僕は星新一先生にもちゃんと声をかけてたんですよ。作家では小林信彦さんも来ていた。『話の特集』が声かけたのかな。

パーティの最中にね、星先生から僕に電話があったの。「これから行こうと思うんだけどさー」っていうから「どうぞ。ぜひおこし下さい。お待ちしています」と。「そこに小林信彦いない?」「いますけども」「じゃあ、俺悪いけど行かないからごめんね」だって(一同爆笑)。

僕は小林さんの名前は知ってるし、愛読者だった。僕は好奇心から小林さんがどういう人かなあと思ってね。

彼は、座敷の方にいたのね。座敷にあぐらかいて座ってんのよ。まわりに取り巻きの編集者みたいな人が5、6人いて、そのグループだけで固まってるんだよ。「あ、こりゃ入れねえ」って感じ(笑)。何となく妖気漂う。星さんが来ないってのも分かったね。別に小林さん悪い人じゃないんだけど。これにはあとで、もっとコワイことがあったんです(一同爆笑)。

小西●表紙に横尾忠則さんを起用するということは、当初からお考えになっていたのでしょうか。

長谷■横尾さんが会場にみえたから。本来ならば、僕は和田誠さんで表紙お願いしようかなと思ってたんだけど、『話の特集』の表紙描いてますからね。だから、それに匹敵する表紙というとね、横尾さんしか思い浮かばなかったの。「赤塚、たぶん横尾さんは原稿料高いと思うよー。でもここは思い切って1頁5千円くらいでいってみるか」(爆笑)。これは『話の特集』流にね。『話の特集』は和田誠が無料奉仕している本だから。それぐらいの情報入ってる筈だから。全体1頁5千円にしようという、非常に乱暴な提案です。

坂本▲表紙も含めて?

長谷■そう。編集経費が非常に少ないので、全作家均一原稿料だと横尾さんにお話ししようと考えた。パーティの日はお願いしなかったけど。まず「実はお願いがあるんですが、別の日に赤塚と2人で伺いますので一度会って下さい」と。

ま、原稿依頼みたいなものですね。その時、創刊号の3枚表紙を作るという企画は、矢崎さんと赤塚と僕の間で出来上がってたんです。そのために3つの表紙裏広告を取るということまで相談してたからね。

坂本・小西▲おおー。

長谷■横尾さんに最初に言えないからね(笑)、断わられたら元も子もないから(笑)。だから心に秘めて、絶対に僕と赤塚で行ってOKもらっちゃおうと。

小西●3枚表紙ということは、同じ紙質のものが3枚続く訳ですね。

長谷■そうです。1枚目が走り幅跳びか何かの絵ですよね。これはアメリカのスポーツのメンコが使われた。2枚目はローラー・スケート履いてたりとかね。その3枚シリーズのメンコを横尾さんが引き出しから取り出してきて(笑)、子どもだよね、あの人(笑)。「長谷さん、これなんだけど。表紙は」って。「これの背景はこうだよ」って中型の手帳に鉛筆で見取り図を書くんですね。そして背景の惑星とか太陽のプロミネンスとかの写真も出してきた。これを全部合成して下さいと・・・・。

小西●コラージュ、凄いですね。

長谷■大変なコラージュですね。横尾さんから渡された十数点、二十点ぐらいの資料を僕が袋に入れて抱えて、編集室へ戻り、凸版(印刷)の営業さんと直談判。それを3枚作らないといけないからね。もう営業マンは、嫌がってたよ、もちろん。とんでもない難しい仕事だから。

小西●素材は、全部横尾さんの所有物なんですね。

長谷■ええ。でも原画は無し。小さな紙に鉛筆でラフ・スケッチするだけなんだよ。メンコをのぞいた図版は、著作権者へ電話して許可を得るわけ。

小西●へえー。

坂本▲位置指定とかなしで?

長谷■正確ではなくラフです。だから僕と横尾さんの間だけにしか正確なイメージはないんですよ。「こんな感じです」っていうことですね。

坂本▲なるほど。

長谷■その意志を僕が営業の人に伝えなくちゃいけない。製版の直接の担当者じゃないんだよ。だから非常に難しい仕事だった。

小西●伝言ゲームみたいになってしまいますね。

長谷■そう。営業マンが製版マンに伝えると、イメージが当然ズレる。だから横尾さんだって、当然心配だからね。「長谷さん、出来上がったらね、清刷り見せてくれる?」っていう話で。「もちろん、当然、清刷り持って伺います。校正でダメ出しやりましょう」と。「いずれにしても、この表紙を僕はB全ポスターにしますから、横尾さんそのつもりで仕事やって下さいよ」と(爆笑)。

俺の注文も大胆不敵だからね(笑)。やる以上は本物作りたいですからね。これは編集者の仕事だと思ってね。だけどそのかわり大変ですよね。凸版に「口絵にしろ」って何十回いわれたか分からない。「手抜きされるの嫌だから、表紙にするの」って抵抗した(笑)。口絵にしたら製版屋さんが手抜きするに決まってるから。

小西●創刊号は時間かけて作られましたか。

長谷■いや、そんなにかけていられないですよ。プランがスタートしてしまえば普通の雑誌と同じことで、原稿依頼が終わればもう来月号の企画や準備です。スケジュールはプロの雑誌と同じですから。

小西●スタートすると大変ですね。付録ソノシートのこともあるし、横尾さんの表紙にしてもそんなに仕事が速いわけじゃないでしょ。

長谷■メチャクチャ遅いですね(笑)。

小西●それでいきなり3枚連続の凝った表紙だから、修羅場だったのでは?

長谷■さすが横尾さんもびっくりしたんだろうね、だから一応準備してたようで、原稿取りに行ったらすぐ貰えて。そのあとが大変だったんだけどね。油断大敵、火がボーボーってことになったなあ(笑)。

小西●創刊号の表紙は、凸版印刷の清刷りを見てすんなり進行できたんですね。

長谷■うん。最初は入稿が早かったですから、直しもね、順調にできたんですよ。僕もカラー校正なんて、漫画家としてやったことないからねえ。横尾さんのクオリティに合わせてさ。実に無謀というか、コワイもの知らずでした(笑)。(次号に続く)

【一部敬称略/収録=2001年3月5日徳島市・ふらんせ蔵/採録文責=小西昌幸】

4名の写真

▲左から芳賀啓氏(当時柏書房社長)、坂本、長谷、小西01年3月4日、北島町立図書館

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