文化ジャーナル(平成18年12月号)

2006年12月1日

文化ジャーナル12月号

『まんがNo.1』の時代(6)

長谷邦夫さん インタビュー

出■長谷邦夫(漫画家、大学講師、漫画論、栃木県在住)

席▲坂本秀童(徳島謄写印刷研究会代表、牟岐町出羽島在住)

者●小西昌幸(北島町立図書館・創世ホール企画広報担当)

長谷■『まんがNo.1』の編集部員は、僕と、古屋信子さんという新人編集者と、バイトで原稿を取りに走ってくれた桑原さんという女の子と、もう1人男性がいて、それだけなんだよ。プロの編集者は誰もいないんだ。(笑)

古屋さんは校正できる女の子で、編集の勉強をしていて日本社で多少経験積んでいた。しかし、あまりの入稿の遅さで凸版に出張校正で深夜1人で行ってもらった。僕は「行く暇ないから行って来て」って。

そのうち彼女が休んだので、「どうしたの?」って聞いたら、何か「心臓がどきどきして具合が悪いんです」って。彼女の気持ちを分かってあげる余裕がなくて悪かったなあと思った。

小西●うーん、自律神経をやられたのかもしれませんね。とにかくそれだけ凄まじい雑誌だったということですね。

永井豪さんの「ハレンチ学園」も掲載されていますが、この作品については『少年ジャンプ』の編集部や集英社とは問題は起こりませんでしたか。

長谷■それはないです。これは、僕と豪ちゃんの友人関係ということもあったんですけども、永井さんにもオリジナル描いてもらいたかったんです。だけどとってもお願いできる状態じゃなかったし、彼に時間が無いことは依頼に行く前に分かってた。

でも僕がパロディ描くようになったきっかけは、永井豪のパロディ・マンガだからね。それで永井さんのところに行って「『ハレンチ学園』をデザイナーに再構成してもらうけどいい?」って依頼した。それを僕が和田誠さんに紹介してもらった 100%スタジ オ(今をときめく湯村輝彦さん、矢吹申彦さんたちのデザイン事務所)へ持って行ったわけよ。

デザイナーは色を着けたりしたかったろうけどね。とにかく僕と違うタイプのパロディックな一色画面にしてみたかったんです。結果的には音楽的サンプリングやリミックス・マンガだと評価されました。竹熊健太郎さんの見方ですが。

話は少し拡散しますけど、僕は、山上たつひこさんのところにも行ってたんだ。「山上さん、『ゴルゴ13』のパロディ描いてよ」ってね。そうしたら山上さん「うーん」って考え込んで、いい返事はもらえなかった。あの当時、彼はSFに凝っていましたから ね。仕方がなくて僕が『ゴルゴ13』のパロディで、『ゴルゴ十三(とうさん)』なんてアホなマンガ描きましたけどね。

小西●杉浦茂さんのものも、「構成=100%スタジオ」となっていますね。

長谷■杉浦茂先生の場合は、カラー四色ページにしようと考えたの。新作はオリジナルで描いていただける先生ですからね。ファン雑誌時代の『まんが No.1』に既に描いていただきましたから、今度は先生の旧作を貸していただけませんかといいまして、借りてきたマンガをコピーした。

コピーといっても普通のコピーではなくて、これも事情をいいますと、当時フジオ・プロにアメリカで輸入した 250万円くらいのコピー機があったんですよ。スタット・キングというとんでもない凄いコピー機なんだけど、ダメなコピー機なんだよ(笑)。要するに、ゼロックス・コピーじゃないの。本物のカメラが付いていまして、そのカメラで印画紙に自動現像して出してくる。非常にお金のかかる機械で、使いようがなくてね。でも赤塚は新(あたら)し物好きだからね、紹介されたとたん買っちゃったのね。 そのためにマンションの一室を借りたぐらいにでかい機械だった。

このスタット・キングで杉浦先生のマンガをバンバン写真に撮って、きれいな紙焼きにして。ツルツルの印画紙で、スミ線一色のきれいな拡大コピーをたくさん作ったわけです。

坂本▲印画紙に撮るんだからきれいでしょうね。

長谷■「これを全部ハサミ入れて、コラージュ画面に構成して適当に色を着けて作ってください」って言って、100%スタジオに渡したんですよ。

小西●杉浦茂先生は、こういうの喜ばれる方ですか。

長谷■喜んだですね。

小西●何か天真らんまんというか、子どもの心を持ち続けておられる方という印象ですよね。

長谷■スタジオの湯村さんなんかにしてみれば、杉浦先生の陰なるファンというわけで、「あのマンガの顔、面白いよねー」といって、「顔特集するからね」っていって、それで「面白顔左衛門」というタイトルで。矢吹申彦さんとの合作です。

坂本▲コピーをハサミで切って。

長谷■チャチャチャッと貼り付けていくんだよ(笑)。それが原稿になって出てきたんだよねー。〔次号に続く〕

【一部敬称略/収録2001年3月5日 徳島市・ふらんせ蔵/採録文責=小西昌幸】

復刻資料集の写真

『まんがNo.1』付録ソノシート全6枚、奇跡の復刻

「創世ホール通信」の「文化ジャーナル」では現在長谷邦夫先生のインタビュー「『まんがNo.1』の時代」を連載中ですが、その折りも折り、ディスクユニオンから貴重な復刻資料集が刊行されました。これは、三上寛や中山千夏や井上陽水や山下トリオが参加した『まんがNo.1』の付録ソノシート全6枚の復刻CD+本誌6冊からのベスト・セレクション冊子(B5判・252頁!)を紙ケースに収納したもの。21世紀初頭における日本出版界の大偉業の達成だと思います。税込3500円。店頭で購入するには、タワーレコード、新星堂、ツタヤなどのレコード店、またはリブロ、ジュンク堂、ブック・ファースト、三省堂、旭屋書店などの大型書店、全国のヴィレッジヴァンガードで。店頭にない場合は、上記のお店で「自主流通でディスクユニオン発売の『まんがNo.1スペシャル・エディション』(品番FJ-4)を注文します」といえば取り寄せ可能。ディスクユニオン、タワーレコード、HMV、アマゾンなどのインターネット通販でも購入できる。内容詳細については図版をご参照下さい。

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