文化ジャーナル(平成20年2月号)

2008年2月1日

文化ジャーナル2月号

ご期待下さい、辻真先さん講演会

昨(2007)年2月、北島町立図書館・創世ホールは池田憲章氏講演会「故郷は地球~脚本家・佐々木守がめざしたもの」を開催した。その後、池田氏から「次の講演会の講師は辻真先さんがよいのではないか」という提案をいただいた。池田氏は日頃から当館の催しを高く評価してくださっているのである。

年に一度開催する当館の講演会シリーズは《文化各界のあるジャンルを取り上げ、その分野を語るのにふさわしい講師先生を招く》という形態を採用し、ずっと続けてきた。講演のテーマと講師先生の名前を箇条書きすると以下のごとくである。

  • 辞典作りについて=紀田順一郎さん
  • 編集(宮武外骨、長井勝一、赤瀬川原平)について=松田哲夫さん
  • 澁澤龍彦と土方巽について=種村季弘さん
  • 探偵作家(乱歩・十三・風太郎)について=山前譲さん
  • 戦後日本SFについて=柴野拓美さん
  • トキワ荘の漫画家について=長谷邦夫さん
  • 怪獣特撮(円谷・香山・大伴)について=竹内博さん
  • ブック・デザインについて=杉浦康平さん
  • 伊福部昭先生について=木部与巴仁さん
  • 寺山修司について=九条今日子さん+白石征さん+森崎偏陸さん
  • 怪奇幻想文学について=紀田順一郎さん
  • 実写ドラマ脚本(佐々木守)について=池田憲章さん

自慢するわけではないが(内心大いに自慢したいのだが)、人口2万人の町の催しとしてはなかなかに壮観といえるのではないだろうか。講演テーマと講師先生の選定、講師先生への出演交渉と確定後の日程調整、さらに講演会のポスターやチラシ版下作成まで、全て私(小西)が行なってきた。イヴェント会社は一切通していない。そして予算書を見れば一目瞭然であるが、20万円に満たない事業予算でこれらをずっと続けてきたのである。プロの物書きの方からは「講演録をぜひ単行本化するべきではないか」という意見をいただいていることも記しておこう。

池田氏の提案もあって、今年3月2日当館はアニメーション分野の最高峰と呼ぶべき脚本家辻真先(つじ・まさき)さんの講演会を開催する。

辻真先さんは、1932(昭和7)年3月23日、名古屋市生まれ。現在75歳である。名古屋大学卒業後、NHKに入社。「バス通り裏」「ふしぎな少年」等の制作演出を手がけた。その後、1962年にNHK退職後は今日まで、実に45年間の長きにわたり脚本家・作家として活躍。驚くべき分量の作品(アニメ脚本は1500超、ミステリーや旅行エッセイなどの著作は三百超といわれている)を世の中に送りつづけて、バリバリの現役作家として活躍しておられるのである。

辻さんは、戦後テレビ・アニメの現場を黎明期から支えてこられた。「エイトマン」に関わり、「鉄腕アトム」に関わり、「ジャングル大帝」第1話の脚本を書き、同作では弘田三枝子さんが歌う勇壮・胸踊る「レオのうた」の歌詞も手がけておられる。その後80年代まで辻さんはアニメ脚本の世界で疾走し、天文学的数字の脚本をお書きになっている。講演会チラシの裏面に「辻真先氏が脚本で関わった動画作品一覧(一部)」ということで約70のアニメのタイトルを並べたが、まだまだ足りないのである。

辻さんに電話で直接お話を聞いたところでは、手もとに現存した印刷物としての自作シナリオ台本が1500あったということなので、保存されていない物も多く存在するから、2000本に達しているのではないかと言う人もいるのだそうだ。我ら凡人にとっては1000を超すということだけで驚天動地の大偉業というしかないのであるから、いずれにせよ、とてつもない分量の作品を書いた人だということが分かっていただけると思う。

講演会は、ズバリ辻先生のクロニクル(年代記)ということでお願いしてある。辻先生の青春の足跡がそのまま日本の戦後テレビ・アニメーションの歴史と重なるのであるから、辻先生の回想記・自分史は戦後アニメ史に他ならないのである。

辻先生の仕事は、到底一言では言い表せない。先生はアニメ作品の小説化(ノベライズ)本もやっていて、その方面では『どろろ』『ルパン三世』『Dr.スランプ』『Dr.スランプの逆襲』『銀河鉄道999』などがあり、漫画原作を手がけられた作品には『戦国獅子伝』(作画・横山光輝)、『聖魔伝』(作画・石川賢)、『魔球エース』(作画・荘司としお)などがある。さらに《コミグラフィック「日本の古典」》(暁教育図書)という、漫画家と組んで『源氏物語』や『竹取物語』などを翻案紹介する叢書の監修も手がけておられる。とにかく仕事の幅がやたら広いのである。

また朝日ソノラマのサン・コミックスカバー袖(折り返し部分)の惹句(もしくは内容紹介)の文章は、百点以上辻先生がお書きになったのだそうだ。

辻先生の著作の内、今回の講演会に関する物では『テレビ疾風怒濤』(徳間書店、1995)、『戦後アニメ青春記』(実業之日本社、1996)があげられる。前書にはNHK時代の回想として、若き日の岩下志麻さんや十朱幸代さんとの交流が綴られ、美しい女優さん達との記念写真が多数収録されている。また後書には虫プロに出入りしていた頃の永島慎二や北野英明などの集合写真、辻先生が石ノ森章太郎さんや永井豪さんと並んだ写真などが載っている。いずれも貴重なテレビ文化史・アニメ文化史の資料である。ぜひ何点かお借りして当日配布資料に掲載したいと考え、先生にその旨打診中である。が、最近先生は仕事部屋を改装されて資料類が埋もれていて、その上新聞社などにも写真を貸し出しているので、首尾よく発見できるかどうか心もとないというご返事だった。それらの写真は締め切りまでに間に合わなければ、複写したものを使用せざるを得ない。上記のような事情ゆえ、ファンの方々にはこの点、ご容赦いただきたい。

講演会の全容は、町内のケーブルテレビ局・キューテレビが録画し、後日放映してくださる予定だ。また、FMびざんでも番組「トクシマ少年探偵団」などで宣伝ご協力いただくことになっている。

これまでに辻先生とは電話で何度かお話させていただいているが、先生はとにかく超多忙な人で、なかなか捕まえることが困難だ。初めて電話でお話できたときには、昔徳島の女性で「コン・バトラーV」の熱心なファンの人がいて、手紙を頂戴したりお会いしたこともありましたよ、と先生はおっしゃった。では、しっかり宣伝に取り組み、その女性に辻先生講演会の情報が伝わるようにして、会場に足をお運びいただきましょう、実現できるよう頑張りますと、私は先生に約束したのだった。

その女性ファンの方は、その後思いがけず早い段階で見つけ出すことができた。後で判明したのだが、昨年の池田憲章氏講演会に足をお運びいただいていた人で、しかも徳島のSFサークル《ゼロ次元》関係者だった。さっそく私はその方・K島さんと連絡を取り、打ち上げ会にもご出席して欲しい旨お願いした。その方には大阪にお住まいの妹さんがおり、辻先生講演会には妹さんも駆けつけてくださるのだという。本当にありがたいことだ。

京都の出版社、松籟(しょうらい)社の編集者・木村浩之さんからも日帰り参加のご連絡をいただいている。

実は講演会の最適のテキストは『TVアニメ青春記』なのだが、この本は既に版元品切れで、流通していない。そのため会場ロビーでは同書は販売できない。何か代わりになるものはないか辻先生に相談すると、折しも岩波書店から岩波ジュニア新書シリーズの中で先生の新著『ぼくたちのアニメ史』が2月下旬に発売されるとの由。絶妙のタイミングだ。たぶん、間違いなく同書を会場ロビーで販売し、講演終了後のサイン会も開催できるだろうと思う。

辻先生の講演を間近で聴くようなチャンスは、徳島ではもう二度とないはずだ。大阪のSF研究家・浅尾典彦氏の話では、関西などでもこの種の機会はめったにないだろうとの由。どうか皆さん、万難を排して創世ホールに多数ご参集ください。

(2008年2月5日脱稿/一部敬称略文責=小西昌幸)

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