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文化ジャーナル(平成13年9月号)

文化ジャーナル9月号

杉浦康平先生の講演会に総結集を

前からお知らせしているように、当館では10月20日、杉浦康平さんの講演会「ブック・デザインの宇宙~本の森羅万象」を開催する。
北島町立図書館・創世ホールは毎年書物文化をめぐる講演会を開いてきた。それなりに浸透してきたとは思うのだが、まだまだ全国津々浦々に轟く段階には達していない。この機会に過去の講演会をふりかえり、簡単な記録を書き記しておきたい。またチラシを見た人や関心をお寄せいただいている方から、過去にはどんな人を招いたのかと聞かれることも多い。いちいち説明するのも面倒だし、ここらで一覧しておくのもよいと考えた。

以下、箇条書きで過去の講演会のデータを記しておく。(すべて敬称略) 

  • 1996年3月17日◎紀田順一郎講演会「書物と人生~辞典づくりに賭けた人々」◎参加者300人
  • 1997年3月16日◎松田哲夫講演会「本作りに賭けた情熱~宮武外骨、長井勝一、赤瀬川原平、・・・・・・そしてデジタルへ」◎参加者150人
  • 1998年3月15日◎種村季弘(すえひろ)講演会「昭和を駆け抜けた2人の異端~澁澤龍彦と土方巽」◎参加者200人
  • 1999年3月21日◎山前譲(ゆずる)講演会「私が愛した3人の探偵作家~江戸川乱歩、海野十三、山田風太郎」◎参加者100人
  • 1999年10月17日◎柴野拓美講演会「日本SFを築いた人たち~SF同人誌『宇宙塵』・40年の軌跡」◎参加者170人
  • 2000年3月4日◎長谷(ながたに)邦夫講演会「漫画風雲録~トキワ荘物語」◎参加者200人

牧野富太郎や物集高見(もずめ・たかみ)にスポットをあて辞典づくりに生涯を賭けた人たちの人生を紀田先生の導きでたどったのが第1回。以後、編集、異端文化、探偵作家、日本SF、トキワ荘と、様々な角度から書物とその周辺文化について照射する講演会をしてきた。四国の片田舎での試みとしては、一定以上の成果を上げてきたつもりである。それぞれの催しについては、その都度この「文化ジャーナル」などで、企画者としての思い入れや催しの際のエピソードを克明に書いてきたので、詳細をお知りになりたい方はそちらをご参照いただきたい(ご希望があればコピーをお送りします)。

講師の先生方は皆不思議なというか、ある種のつながりがある。すなわち紀田さんと松田さんは著者と編集者としてのつきあいがあり、松田さんは種村さんの都立大時代の教え子だった。海野十三の資料集を私が作っていたときにどうしても見付けられなかった「JU通信」(海野十三氏の碑を建てる会会誌)を、紀田さんの助言により柴野さんからお借りすることができたのだが、それが縁で柴野さんの講演会を開くことになった。その講演会ポスターをお送りしたことで、長谷さんと文通が始まって講演会に結び付いた。山前さんはお師匠さんに当たる中島河太郎先生がご病気で入院されたためピンチ・ヒッターとしてきていただいたのだが、中島先生に依頼したきっかけは「JU通信」の復刻資料集に書きおろし原稿をお願いしたことが始まりだった。後に私は山前さんと一緒に海野の資料集をもう1冊作ることになって、それをご覧になった柴野さんの勧めで小西はこの春、山前さんが常任理事を務める日本推理作家協会に入会した(紀田、柴野両氏は推理作家協会会員)。紀田、柴野、長谷3氏は歴史的な「第1回日本SF大会」の現場にいた人たちだ。さらにいえば紀田さんも柴野さんも山前さんも私が理事をさせていただいている「海野十三の会」の有力会員である。

そして今回ブック・デザインにスポットを当てようと考え、私はこの世界の頂点にそびえ立つ人・杉浦康平先生に講師をお願いすることにした。先生は、紀田順一郎さんと荒俣宏さんが編集した国書刊行会の「世界幻想文学大系」3期45巻のブック・デザインを手がけた方なのだ。恐る恐る手紙を書いて依頼してみたのが今年の春のことだった。OKの電話を杉浦事務所の佐藤篤司さんからいただいたときは、すごくどきどきした。私のミニコミの読者である写研の平賀隆二さんのお口添えもあったのだと思う。

紀田順一郎さんの講演会を開いたとき、私は個人的なおみやげとして雑誌『幻想と怪奇』などと共に「世界幻想文学大系」第3期のポスターを紀田さんから頂戴した。ポスターは杉浦康平さんと鈴木一誌さんのデザインでB2サイズ両面印刷の大力作である。このポスターや、杉浦先生の手がけられた写研のポスターとカレンダー、各種チラシを10月初めから図書館1階に展示する。そして先生の著作やこれまでにデザインされた代表作を多数展示する予定だ。関連展示としてグラフィック・デザインや本のデザイン、活字研究、文字組版などに関する本も並べることになるだろう。ご期待いただきたい。

8月末、竹尾から宅配便が届いた。中には、この講演会のために杉浦事務所がつくってくださったオリジナル・チラシ250枚が入っていた。紙の卸 屋さんである竹尾は、杉浦先生と深い関わりがあり、今回の講演会で当館にお金がないため完全なご厚意でこのカラー・チラシをお作りいただいたのだ。講演会に参加いただいた方に差し上げる予定である。

今年の夏、京都の納涼古書祭りの目録に、株式会社竹尾百周年記念『紙とデザイン 竹尾ファインペーパーの50年』が4500円で出品されているのをみつけた。杉浦事務所の方に尋ねてみたら同書には杉浦先生のエッセイが冒頭に掲載されているということだったので、私はただちに注文した。無事抽選に当たり、この本は私のものになった。著名デザイナーが愛用する竹尾の紙についてエッセイを書きその横に当該紙が綴じられている。杉浦先生は「NTラシャ」についてお書きになっていた。その文章で初めて知ったのだが、この紙はなんと日清紡の製品だったのである。杉浦先生は、80年代に日清紡の研究スタッフと共にこの紙の色を増やすお仕事に取り組んだ思い出をお書きになっていた。北島町は周囲を川に囲まれていて、化学工場や紡績工場の町として栄えてきた。日清紡もその1つである。たまたま市町村の境界線の関係で工場の住所地は徳島市になっているが、正門は北島町にあり、最近まで広い社宅が北島町にあった。私はこの「通信」を発行したら、日清紡にあいさつに行かなければならないと考えている。そして杉浦先生の講演会ポスターを社員食堂に貼っていただけないか、ご検討をお願いするつもりだ。

杉浦先生から高知の木工デザインをしているグループに案内状を送るようにとの指示があった。彼らは、杉浦先生の講演会を97年10月31日に高知県立美術館ホールで開いた人たちであり、10月20日には泊まりこみで徳島にやって来ることが決定している。 

一月ほど前、この講演会に対して工作舎の後援をいただくことができた。私は古書店で『アジアの宇宙観』や『人間人形時代』を買った。『季刊銀花』の古書も多数買った。これらの書籍資料もケースに入れて展示するつもりだ。

竹尾と杉浦事務所のご厚意で本町のために作っていただい美しいたチラシを、上に掲げておく。この杉浦先生の講演会に対して、関心あるすべての皆さんの総結集を心から呼びかけるものである。どうか大きな力をいっぱいお寄せいただきたい。よろしくお願いいたします。

(2001年9月7日脱稿 小西昌幸)

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