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文化ジャーナル(平成14年11月号)

文化ジャーナル11月号

セタンタ・セカンド・アルバム

アルバムジャケット

10月13日に開催した北島トラディショナル・ナイトVOL.6「郷愁のアイルランド音楽~セタンタ・コンサート」は、入場者310名というアイルラン ド演奏会シリーズにおける大記録を作った。催しというものは毎回毎回が真剣勝負であり、決して気をゆるめてはいけないのだが、慣れてくるとどうしてもほころびが出てくるものだ。蓋を開けるまではかなり心配だったのだが、予想以上の参集者があった。ご支援いただいた皆さんに深く感謝したい。

演奏会当日は、彼らのファーストCDが70枚以上売れた。これも大記録である。残念だったのは、既に完成しているセカンド・アルバムの日本到着が遅れ、北島町の演奏会に間に合わなかったことだった。思案の結果、コンサート実行委員会で20枚買い取りして、当館の事務室に来ていただける人に販売するという方法をとることにした。セタンタのセカンド・アルバム「アーリー・ライジング」(2500円)は10月18日に到着した。11月2日現在で6枚売れている。まだ14枚残っているので、ぜひお買い求めいただきたい。

新刊情報

『季刊本とコンピュータ』2002年秋号(第2期第5号、トランスアート、2002年9月10日、B5変型判198頁、本体1500円)が雑誌内雑誌「アジア読書」で、34頁にわたり杉浦康平氏を全面特集している。いうまでもなく杉浦氏は、2001年10月に当館で開いた講演会「ブック・デザインの宇宙 本の森羅万象」の講師としておこしいただいた著名なグラフィック・デザイナーである。特集には津野海太郎氏(元晶文社の名物編集者、『本とコンピュータ』総合編集長)、アン・サンス(韓国のデザイナ-)ご両名との対談、古賀弘幸氏作成の年表「杉浦康平とアジア」、台湾・インド・韓国・中国のデザイナーたちからのメッセージ等が掲載されている。カラー図版が豊富で、資料的価値極めて高し。表紙からして、微笑む杉浦さんのカラー写真なのでファンは買うしかない。「アジア読書」の「後記」によると杉浦さんの書籍装訂の足跡をたどった本は、全2巻本で来年工作舎からの刊行が決まったようだ。楽しみである。本号から開始された松田哲夫氏の連載「造本に恋して」にも注目。

『山口昌男山脈』第1号(めいけい出版、2002年7月25日、A5判192頁、本体2000円) 今年8月末北海道に行った際、札幌の勇崎哲史さん(写真家、プランナー、伊福部昭氏の義理の甥に当たる北の国の実力者)のお導きで札幌大学学長・山口昌男先生(歴史人類学、文化人類学)に会わせていただいた。同学の学長室ギャラリーで買ったのが本書。扉には山口先生のサインをしっかり頂戴した。本書は山口先生の個人誌で、言うまでもなく雑誌のタイトルは懇親の力作『内田魯庵山脈』(晶文社)に由来する。内容は、窪島誠一郎(作家、キッド・アイラック・アート・ホール主宰、信濃デッサン館・無言館館主)との対談「新しい大学のかたちを求めて」、榎本了一・窪島との鼎談「寺山修司の挑発力」、山口学長へのインタビュー連載「回想の人類学」等々、どこをとっても読みごたえ十分。面白くてたまらなかった。また60年代の文章「アフリカ通信」も採録されていて、実に痛快だった。しびれてしまう。11月1日には第2号も出た。版元はあまりなじみがないところだが、一般書店から注文できる。

『sumus(スムース)』10号(sumus.co、2002年9月30日、A5判80頁、頒価600円)特集「スクラップブックの時代」。注目すべきは、東京創元社が2001年初頭に刊行した限定200部本体30万円の江戸川乱歩『貼雑年譜(はりまぜねんぷ)』完全復刻版にまつわる関係者インタビューで、これが滅法面白い。同社会長・戸川安宣さんと原本の解体・保存修復を担当された紙修復工房代表・脇敦子さんに、河上進氏と扉野良人氏が聞く。戸川会長の熱意と執念、紙資料修復の立場からサポートした脇さん、両者のこだわりが復刻版に命を吹き込んだということがよく分かる。『sumus』は少部数発行のため、ごく限られた書店にしか置いていない。従って直接注文がよい。頒価+送料=合計800円を下記郵便振替口座に送付されたい。通信欄に〈『sumus』10号希望〉と明記すること。【郵便振替:01090ー2ー25666口座名:林哲夫】

清水正『土方巽を読む 母性とカオスの暗黒舞踏』(鳥影社、2002年7月30日、A5上製本460頁、本体2800円) 清水正(しみず・まさし)は日本大学芸術学部教授、批評家。暗黒舞踏の創始者・土方巽は、数冊の著作を現わしたがその言葉遣いがあまりにも日常言語から隔たるもので、通常の読書体験とは違う感覚が要求される。本書で清水はそれらに全力で挑む。例えば土方の代表著作『病める舞姫』の読書ノートに対しては、なんと290頁もの分量で綴 っている。格闘と呼ぶにふさわしい。写真資料も豊富で、手ごたえあり。

『おとなの工作読本』第1号(誠文堂新光社、A4変型判132頁、2002 年10月1日、本体1300円)「新青年」研究会の末永昭二氏が編集したムック本。ラジオ、鉄道模型、模型飛行機等の物作りの原点を体験した世代に向けられた工作記事の読み物シリーズで年数回刊行してゆくとのこと。本号の特集は「ラジオ少年の時代」。特筆すべきは「ラジオ少年の夢の本棚」というカラー頁。ここに海野十三の戦前や戦後間もない頃の科学啓蒙書(佐野昌一名義)や科学小説の珍しい本の書影が十数冊掲載されている。海野ファン・研究者必読の文献資料といえるだろう。お見逃しなく。 

本の表紙

赤岩和美・石井俊夫:監修『ブリティッシュ・ロック大名鑑 1950年代ー78年』(柏書房、2002年9月15日、A5判函入り上製本792頁、本体8000円)1978年にブロンズ社から刊行された『ブリティッシュ・ロック大名鑑』は、世界最大規模の克明緻密なロック人名事典だったが刊行直後の版元の倒産等もあって、久しく伝説の貴重書になっていた。その翻刻新訂版が柏書房から刊行された。これは中年世代のロック愛好者・研究者にとって大ニュースである。関係者の労をねぎらいたい。膨大な情報量であるため、図版類や追補記事は最小限にとどめられているが、これはやむを得ないことだ。むしろ今翻刻版が刊行された大きな意義を、声を大にして称賛せねばならないと私は思う。

(2002・11・2脱稿 創世ホール企画広報担当・小西昌幸)

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