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文化ジャーナル(平成17年3月号)

文化ジャーナル3月号

九條今日子さん 講演会
「夫・寺山修司を語る」にご参集下さい。

2004年2月29日夜、北島町フジグランの中華レストラン《バーミヤン》で野坂惠子さんの演奏会(「伊福部昭の箏曲宇宙」)のささやかな打ち上げをした。そのとき野坂さんからこんなことをいわれた。「小西さん、次の講演会はどなたを呼ぶんですか。もうお考えになっているのでしょ」。私は野坂先生の鋭い質問に少しうろたえつつ答えた。「はい、実は寺山修司さんの業績顕彰をテーマにして、講師には寺山さんの奥様を考えています」「まあ、九條今日子さん」。野坂先生はやっぱり凄い方だなあと舌を巻いたことだった。

それから半年以上悩みに悩んで私は10月に、ついに九條今日子さんに講演依頼の手紙を書いた。私の場合、この種のことは自分の中での機運が高まらないと、どうしても動き出せないのだ。手紙を出して1週間ぐらいたった頃、人力飛行機舎に電話をかけた。2001年に高知県立文学館で開かれた「寺山修司展」の初日に出掛けた際、九條さんと名刺交換していたので連絡先は分かっていた。電話口で九條さんは快く引き受けてくださった。こうして、この講演会企画が一挙に動きはじめたのだ。

1974年、私(小西)は名古屋の映画館で「田園に死す」をみてしびれた。大学1年のときだった。強烈なイマジネーションに満ちた映画だった。畳をめくると谷底が見えたり、暗黒の深淵に花が落下してゆくというような幻想的な映像の奔流は、私をとりこにした。初めて寺山ワールドに魅せられたのだった。以後、この作品は私の生涯日本映画ベスト3に必ず入る映画になった(その他は「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」「仁義の墓場」など)。

「田園に死す」のサウンドトラックLPも当時レコード店の店頭で買った。名古屋だったか徳島だったかもはや記憶が定かでない。この種のものは見かけたら早目に入手しておかないといけないということはその頃から何となく感じていた。通常の音楽雑誌に広告が掲載されることなど決してなかったからだ。LP「身毒丸」や「邪宗門/身毒丸」(2枚組)も店頭で発見して買っている。演劇関係のLPは今は亡きトクシマレコードで買った記憶がある。ビデオなどない時代、映画の雰囲気を追体験したいと思うとき、サウンドトラック盤は非常に重要だったのである。また天井桟敷のLPはジャケット・デザインも美しく(合田佐和子、戸田ツトム)見付けたら買う物と私は決めていたのである。

90年頃に東京明大前のモダーン・ミュージックの生悦住店長と仲良くなったので、それらのLPをリアルタイムで買っていたことを言うと、どれも現在数万円の価値がありますよといわれて、驚いたことをよく覚えている。

講演会の協賛企画としていつものように図書館のカウンター前スペースで関連資料を展示することにした(3月1日~20日)。前述した秘蔵のLPもガラス・ケースに入れて並べている。2つのケースの中の本やレコード等は、全て私の所有物である。珍しいものでは、『地下演劇』の4号と5号がある。講演会では九條さんの聞き役をお勤めいただく白石征さんが新書館で作られた入魂の追悼集『さよなら寺山修司』も入って いる。それらは約30年間、私がこつこつ収集してきた物だ。パネルボードには、幻想的な映像資料の写真や寺山さん、九條さんの写真コピーを展示した。少しでも雰囲気が伝わると幸いだ。

マスコミ各社は大変好意的で、「読売新聞」徳島版(1月28日) 、「 徳島新聞」地方面(2月18日)、「徳島新聞」文化面(2月25日) 、「 デイリースポーツ」四国瀬戸版(2月28日)と、どれも大きな記事扱いで掲載していただいた。さらに朝日新聞大阪本社学芸部の記者の方からも講演会情報を大阪本社版文化面に掲載する旨お知らせいただいている。その記者は、この講演は貴重なものなのでぜひ行きたいが別件の取材が決まっていて残念だと凄く悔しそうだった。

キューテレビ(旧名北島CATV)の取材が3月1日にあった 。私が3階ホールの客席で企画の動機等についてインタビューを受け、その後1階図書館で展示物を解説するという展開で、約20分にまとめられて3月4日と5日に放映された(各1日6回)。番組録画テープは、九條さん、白石さん、三沢市寺山修司記念館にお送りしようと考えている。

開演前と終了後の会場内には、いつものように音楽を鳴り響かせる。思案の末に「田園に死す」サウンドトラックCDの音楽を流すことに決めた。このアルバムは本当に完成度が高いと思う。

講演会場のロビーでは下記の図録やCDなどを販売する。14点扱うことになった。今回、かなり珍しいものを取り寄せた。徳島では、なかなかこういうものに直接接する機会はないと思うので、ぜひお買い求めいただきたいと思う。CD類は限定少数プレスの貴重品だ。2点のサントラ盤「田園に死す」と「さらば箱舟」は、メジャーからLPが発売されながら、歌詞の問題等からCD化がずっとなされなかった。最近になってマイナー・レーベルが紙ジャケットで復刻が実現したのでファンにとっては本当に待望のCD化だったのである。また三沢市寺山修司記念館の図録もとてもよくできた編集なので、必読だ。取扱商品は全て私が選んだものだ。どれも寺山ワールドを体験できるものなので、ぜひ記念にお買い求めいただきたいと思う。

【徳島では入手しづらい図録、CD、ポストカード】

  • 図録『寺山修司記念館(1)』 税込2000円
  • 図録『寺山修司記念館(2)』 税込1500円
  • CD「書を捨てよ町へ出よう」 税込2940円
  • CD「さらば箱舟」サウンドトラック 税込2940円
  • CD「田園に死す」サウンドトラック 税込2940円
  • CD「薔薇門」 税込2940円
  • ポストカードセット「幻想写真館(1)」8枚組 税込1050円
  • ポストカードセット「幻想写真館(2)」8枚組 税込1050円
  • ポストカードセット「幻想写真館(3)」8枚組 税込1050円

【書店流通している書籍】

  • 寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』角川文庫 税込540円
  • 寺山修司『寺山修司青春歌集』角川文庫 税込460円
  • 『ジャパン・アヴァンギャルド』PARCO出版 税込5040円
  • 『新潮日本文学アルバム 寺山修司』新潮社 税込1260円
  • 『コロナ・ブックス 寺山修司』平凡社 税込1600円

最近、角川文庫が寺山さんの本を次々に新装復刊している。没後20年以上経過してなお、寺山ブームは連綿と続いているのだ。おそらく太宰治のように寺山修司も永遠のスタンダードになろうとしているのだ、過激なままで。

1月末以降、講演会に関する問い合わせが頻繁に届いている。中には、寺山さんは大学の先輩にあたり学生時代見かけたこともあるという男性や、白石征さんの高校時代(白石さんは愛媛県今治市ご出身)の同級生という女性からのご連絡もあった。

意外な手ごたえとして、年配の方からの激励が多くあることが挙げられる。「熱狂的なファンが殺到して大変なことになるのではないか。必ず会場に入れるのか」といった内容でご心配される向きの反響まで頂戴している。企画者にとって立ち見で溢れるくらいの催しは望むところである。私の読みでは、客層としては、種村季弘先生に澁澤龍彦さんと土方巽さんについて語っていただいた「昭和を駆け抜けた2人の異端」のときと重なるのではないかと想像している。

種村先生は1998年3月15日創世ホールの壇上で、希薄な時代に澁澤さんたちの生き方が少しでもヒントになればよいと思うという趣旨のことを、講演の結びでおっしゃった。それは今回の講演会企画の意義(或いは志)とも共通する、核心をついた言葉だと思う。ぜひ万難を排してご参集いただきたい。

【2005年3月5日脱稿 創世ホール企画広報担当・小西昌幸】

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