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文化ジャーナル(平成17年8月号)

文化ジャーナル8月号

高知県立美術館で水木しげる展と特撮映画大会

2004年11月6日から2005年1月10日にかけて江戸東京博物館で開催され話題を呼んだ「大(Oh!)水木しげる展」。私は、昨年野坂惠子先生の演奏会のために11月22・23日と上京していたのだが、勉強不足で知らず、帰りの羽田空港に向かう列車の吊り広告で催しの案内をみてガク然とし、悔しい思いをしたのだった(2日目に印刷博物館とハシゴすることもできたのに!)。その展覧会がついに四国に来る。7月31日から9月25日まで高知県立美術館で開催される。

同展は荒俣宏・京極夏彦プロデュースの水木画業一大回顧展である。2004年4月29日に水木の出身県の鳥取県立博物館を皮切りに、福岡県立美術館、大丸ミュージアムKOBE、同 KYOTO、岩手県立美術館、江戸東京博物館、新潟県新津市美術館、北海道旭川美術館、岐阜市歴史博物館と巡回し今のところ高知が最後のようだ。荒俣・京極・水木は雑誌『怪』(角川書店)の同人であり、最良最適の布陣だろう。この夏には「姑獲鳥(うぶめ)の夏」「妖怪大戦争」が上映されるから、高知の展覧会は絶好のタイミングといえるのではないか。

「大(Oh!)水木しげる展」と関連して、美術館ホールで8月6・7日に「特撮映画大会」がある。同美術館のスタッフには映画愛好家の藤田さんという方がいて、彼の企画である。2003年8月の「怪談映画大会」も氏の企画。「創世ホール通信」は毎号氏にお送りしている。藤田さんは以前徳島に住んでいたことがあり、私のミニコミも買ってくださっていたという立派な御方だ。

「特撮映画大会」上映作品は次のとおり。有料。 《Aプログラム》8月6日(土)10時~「宇宙人東京に現わる」(島耕二監督、1956、大映)、「大魔神怒る」(三隅研次監督、1966、大映) 《Bプログラム》6日(土)14時~「ゴジラ」(本多猪四郎監督、1954、東宝)、「世界大戦争」(松林宗恵監督、1961、東宝) 《Cプログラム》7日(日)10時~「ガス人間第1号」(本多猪四郎監督、1960、東宝)、「妖星ゴラス」(本多猪四郎監督、1962、東宝) 《Dプログラム》7日(日)14時10分~「マタンゴ」(本多猪四郎監督、1963、東宝)、「海底軍艦」(本多猪四郎監督、1963、東宝)

創世ホールには、上記2つの催しのチラシを置いてある。ぜひご注目を。私は8月6日に友人数名と共に訪問する予定だ。

さらに同美術館ホールでは、8月28日に《「大水木しげる展」映画大会》として「ゲゲゲの鬼太郎」「妖怪百物語」「東海道お化け道中」「帝都物語」「雨月物語」の映画上映会もある。私は、高知の人がマジでうらやましい。主催:高知県立美術館(Tel088・866・8000)

杉浦康平編著『アジアの本・文字・デザイン』

杉浦康平先生の新しい対談集がトランスアートから出た。これが滅法刺激的で面白い。韓国、中国、台湾、インドの優れたデザイナーたちとの対話と考察は、根底に相互の深い友情と尊敬の心が流れていて胸を打つ。散りばめられた豊富な図版は驚異の連続というほかなく、全く飽きることがない。開くたびに発見がある。各デザイナーの作品と共に杉浦先生デザインの書物や各種催しのチラシの図版が散りばめられており、これも拾い物だ。雑誌デザインの業績はトランスアートの『疾風迅雷』でみることができるし、次はいよいよ工作舎の『杉浦康平 ブックデザインの宇宙(仮題)』全2巻に期待。

『アジアの本・文字・デザイン 杉浦康平とアジアの仲間たちが語る』トランスアート、2005年6月27日発行。A5判・352頁。本体2800円+税。

川島ゆぞ 『アメリカから来た赤ん坊』

川島ゆぞ氏(本名川島裕造)は、1933年生まれで徳島県鳴門市在住。2000年まで鳴門市の大手製薬会社役員を務めた。氏は、星新一、小松左京、光瀬龍、筒井康隆、眉村卓、手塚治虫、長谷邦夫などが関係した日本最強のSF同人誌『宇宙塵(うちゅうじん)』のごく初期からの同人で、講談社や出版芸術社か ら出た『宇宙塵』傑作選に作品 が収録されたほか、これまでに単行本3冊 (『笑う受精卵』『暗殺童話』『タイムましん』)を刊行している。自身が医学博士ということもあり、小説の作品世界はすべて医学薬学テーマなのが特徴だ。本書は7月に出た最新長編。アメリカに住む初老の植物病理学者・トマス牧野が主人公だ。人間クローン研究をめぐり襲撃拉致された甥の謎を追うミステリー仕立の構造で一気に読ませる。意外などんでん返しがあり、読後感は非常に爽やか。SFファンならお気づきと思うがタイトルは映画「ブラジルから来た少年」へのオマージュになっている。また主人公の名前は、川島氏が高知生まれということもあり、やはり牧野富太郎からきているのではないかと私は想像している。

『アメリカから来た赤ん坊』新風舎文庫、2005年7月15日発行。文庫判・222頁。本体700円+税。

佐々木守 『ネオンサインと月光仮面』

佐々木守は、「コメットさん」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」「アルプスの少女ハイジ」「柔道一直線」「シルバー仮面」「アイアンキング」などの脚本を手がけ、戦後テレビ界をけん引した脚本家。その佐々木 が書き上げた宣弘社・小林利雄の半生記が登場。小林は、「月光仮面」「豹 (ジャガー)の眼」「快傑ハリマオ」「遊星王子」「隠密剣士」などを制作した宣弘社プロダクションの社長であり、広告代理店宣弘社の社長でもあった。広告代理店業務では「ウルトラマン」「キャプテンウルトラ」「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」「柔道一直線」などの番組で、スポンサーと放送局の間 に立つ仕事をした。その一方で小林は戦後日本におけるネオンサイン開拓の第一人者として活躍してきたのだ。彼は希代の傑物というにふさわしい。血湧き肉踊る本!

『ネオンサインと月光仮面 宣弘社・小林利雄の仕事』筑摩書房、2005年6月25日発行。四六判・222頁。本体1800円+税。

『 戦線文庫(全3巻)』(日本出版社 )

日本海軍が戦地の兵士向けに配布していた月刊誌『戦線文庫』(興亜日本社)は、吉川英治、菊池寛、菊田一夫、高田保、長谷川伸、椋鳩十、小栗虫太郎、海野十三、蘭郁二郎、野村胡堂、城昌幸、乾信一郎、森田たま、湊邦三、石坂洋次郎、林芙美子、吉屋信子など多彩な人々が執筆した雑誌で、探偵作家たちも数多く登場するため、ミステリ愛好家などからは前々から注目されていた。しかし現物が国立国会図書館にもないということで、幻の雑誌として扱われてきた存在だった。その本格的な資料集成と研究書が登場した。第3号と53号の完全復刻版、約500頁の「『戦線文庫』解説」を合わせてボックス・セットにしたのが本書だ。復刻版は、3号が238頁、53号が200頁ある。「解説」には、詳細を極めた解説のほか、主要目次と記事の復刻が怒涛のように並ぶ。文学資料としても、庶民の生活資料としても、戦時資料としても、とにかく貴重な一級品である。本書の登場に称賛の拍手を送りたい。この充実ぶりでこの値段は非常に安い。

『戦線文庫(全3巻)』日本出版社、2005年7月15日発行。B6判1冊、A4判2冊。本体8000円+税。

(2005年7月27日脱稿 敬称一部略 文責=北島町創世ホール企画広報担当 小西昌幸)

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