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文化ジャーナル(平成18年6月号)

文化ジャーナル6月号

新刊書籍情報

工藤強勝『デザイン解体新書』

工藤強勝(くどう・つよかつ)氏は『SD』『別冊太陽』『本とコンピュータ』などのアート・ディレクションで著名なグラフィック・デザイナー。本書は、工藤氏が極めてていねいに本作りのノウハウを伝授した、ブック・デザインの指南書である。当館は、かつて杉浦康平先生の講演会を開催した際、美麗なカレンダーやポスターの関連展示を行なったのだが、それらは当時写研にいた平賀隆二さんの行き届いた手配によるものであった。本書には、その平賀さんも関わっている。

『デザイン解体新書』ワークスコーポレーション、2006年3月27日発行。A5判ソフトカバー・272頁。本体2381円+税。


紀田順一郎『戦後創成期ミステリ日記』

本書は当館とも深い縁のある作家・評論家の紀田順一郎さんが二十代の頃に同人誌に発表した伝説の批評を集成したものである。紀田さんは、慶応義塾大学1年(1954年)の秋、同大推理小説同好会に参加、4年(1957年)のときにはSRの会(SRはシールド・ルーム=密室の頭文字)にも参加された。大学の同好会では佐藤俊、佐藤俊太郎、佐藤高嗣等の名義を駆使して同人誌『推理小説論叢』に、SRの会では酷使官(黒死館のもじり)等のペンネームで会誌『SRマンスリー』に、それぞれ辛らつな推理小説批評を展開した(それは推理小説ファンとしての切実な心情から発せられている)。本書の第1部から3部にはその文章を一挙収録、当時を回想した序章「戦後の青春と推理小説」では、大伴昌司や桂千穂との友情も語られている。この部分は、SF・特撮愛好家にとっても重要な文章であるといえよう。紀田さんはこの本の後、怪奇幻想文学のクロニクルに取りかかり、ついで映画、音楽などの同時代史を手がけるということだった。続刊にも大いに期待しよう。

『戦後創成期ミステリ日記』松籟社、2006年4月14日発行。四六判ハードカバー・346頁。本体2200円+税。

 


浅尾典彦『アニメ・特撮・SF映画メディア読本』

浅尾典彦氏は、大阪を拠点に特撮やSFの催しなどの活動をしているサークル夢人塔(むじんとう)の代表で 専門学校講師、日本SF作家クラブ会員。SF映画ポスターのコレクターとしても国際的に有名な存在である。私は昨年夏、旧知の池田憲章氏が浅尾氏主催の「アウターリミッツ」上映会で解説をするというので、大阪日本橋のミニ・シアターに出掛けたことがあった。その時、ご本人に会う機会を得て大変お世話になり、そのまじめな姿勢に好感をもった。ファンやコレクターは数多いが、きちんと催しを開き地に足をつけた活動を継続することは並大抵でない。浅尾氏はそれをしている人で中島らもさんとも交流があった。本書は映像専門学校のテキストとして書かれたものを発展させた内容で充実度が凄い。映画の歴史から始まり、ディズニー、ハリーハウゼン、手塚治虫、円谷英二、宮崎駿、ハマー・フィルム、タツノコ・プロ、アウターリミッツなどについて、非常に深い切り口と平易な文体で解説していて、これがベラボウに面白いのである。また 110頁もある巻末の資料頁(全体の4分の1超の分量)の充実度も凄い。浅尾氏は、世界二十か国を映画ポスター資料収集のために歩いたという強者だ。ぜひそのあたりのエピソードをまとめた本も出してもらえるとありがたい。

『アニメ・特撮・SF・映画メディア読本 ジャンルムービーへの招待』青心社、2006年4月17日発行。A5判ソフトカバー・384頁。本体2200円+税。


旭堂南湖同人誌『大阪城 南湖と講談と、時々、ミステリー』

創世ホールでもおなじみの上方講談師・旭堂南湖(きょくどう・なんこ)さんの同人誌第3弾。当初から3号で完結させると公言していたので、本号をもって同人誌発行は終了となる。本格ミステリ作家・芦辺拓氏を筆頭に、唐沢俊一、森元暢彦、藤本和也など、プロのライターや漫画家の執筆陣が豪華。小西は「徳島での旭堂南湖さん」という随筆を書いた。南湖さんのエッセイも抜群の面白さだ。中でも仲良しの落語家3人と2泊3日で高野山に行く「合宿」が傑作。夏場に涼しい所に行きたいということで企画したのに、日程調整がつかず結局行けたのは冬場の12月になってしまい、カーナビ搭載の車で出かけているのに道に迷い倍の時間がかかったりと、臭うようなユーモアがある。南湖さんは、去る4月29日、大阪のトリイホールで「人前結婚式&披露講談会」を開き、ご結婚された。私も参加したが、美人のパートナーと並んだ南湖さんは大変お幸せそうだった。

『大阪城 南湖と講談と、時々、ミステリー』南湖事務所、2006年4月29日発行。A5判・90頁。本体1300円+税。


末永昭二『電光石火の男』

著者は気鋭の大衆文学研究家。2001年に『貸本小説』(アスペクト)を発表し話題を呼んだ。本書は、1961年2月21日にゴーカート事故で世を去った俳優赤木圭一郎(享年21歳9か月)の残したものを検証。事故前後の状況を多くの活字資料からていねいに浮かび上がらせ、彼が出演した日活アクション映画の熱気とその時代背景などを考察する。著者は大衆文学研究の鬼のような存在であり、そのことが本書を単なるスターの評伝に留まらないものにしている。本書の後半部分が末永氏の面目躍如たる個所であり、赤木の「拳銃無頼帖」シリーズが貸本作家・城戸禮(きど・れい)の原作であること、原作と 台本と完成映画の異同などを丹念に照合している。末永氏は、前著『貸本小説』の総論的展開から、各論というべき部分に考察を発展させたのだといえるだろう。

『電光石火の男 赤木圭一郎と日活アクション映画』ごま書房、2006年5月11日発行。四六判ハードカバー・190頁。本体1429円+税。

(2006・6・2脱稿/一部敬称略/文責=北島町立図書館・創世ホール館長小西昌幸)

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