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文化ジャーナル(平成20年8月号)

文化ジャーナル8月号

紀田順一郎先生の推理作家協会賞受賞を祝福する

北島町立図書館・創世ホール 小西昌幸

5月16日夜7時過ぎ、木村浩之氏から電話がかかってきた。木村氏は京都の出版社・松籟社(しょうらいしゃ)の優秀な編集者で、大変な美青年である。木村氏は「先ほど連絡があったのですが紀田順一郎先生の『幻想と怪奇の時代』(松籟社、2007年3月)が第61回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞されました。同書は創世ホール講演会が契機になって出来た本なので小西さんにすぐお知らせした次第です」といった。今回の評論その他の部門には最相葉月さんの『星新一 1001話を作った人』もノミネートされていた。紀田先生の本は最相さんの『星新一』とのダブル受賞だった。私と木村さんは、受賞できてよかったですねえ、本当に、と話し合った。その後、推理作家協会賞の贈呈式の案内状が届き、そこには「ご招待」の押印があった。贈呈式は6月30日である。月曜日なので私には好都合だ。さっそく東京行きの準備に入った。

6月20日、私は紀田先生に下記のような電子書簡をお送りした。


【小西昌幸→紀田順一郎先生宛て電子書簡 2008年6月20日】

紀田順一郎様
拝啓。お元気でご活躍のことと存じます。このたびは日本推理作家協会賞(評論その他の部門)の受賞、本当におめでとうございました。直接お電話をしてよいものか、電子書簡や手紙がよいか、なんとなく逡巡をしておりましたら、あっという間に時間がたっておりました。お祝いのメッセージをお送りするのが遅くなりまして、本当に申し訳ございません。お許しください。6月30日には、ぜひとも記念の式典に駆けつけ先生のお姿を写真記録に収めるべく、既に航空券等手配しました。またその「贈呈式」に際しては招待のご通知をお手配いただくなど、ご配慮にただただ恐縮しております。
先週、自治労文芸コンクールの一次審査という労働組合関係の仕事で、三浦半島方面で三日間缶詰になっていました。1日余分に休みを取って、13日のお昼に四志本アイさんと池田憲章氏と3人で食事をしました。アイさんからはお手紙をいただくたびに上京時は連絡をしてくださいといわれていたので、やっとそれがかなって、ほっとしています。お二人とも紀田先生の受賞をとても喜んでおられました。その折に、少し時間をいただいてアイさんにインタビューをさせていただきました。八郎さんとのことのほか、三木武夫さんとのことなど、徳島県関係のことを重点的に伺いました。
今後ともご指導方よろしくお願いいたします。それではそろそろ失礼いたします。 健康第一です。くれぐれもご自愛ください。
小西昌幸


その1時間半後に紀田先生から、下記内容の電子書簡が届いた。先生は本当にきちょうめんな方で、恐縮してしまうのである。

【紀田順一郎先生→小西昌幸宛て電子書簡 2008年6月20日】

小西昌幸様
ご祝辞をありがとうございます。創世ホールの講演がきっかけとなって、今回の受賞に結びついたわけで、まことにありがとうございました。 このような展開は予想していませんでしたが、天の時というような必然的な結びつきがあったものと思います。貴館での講演は第1回のときからで、そのことを考えると遠い淵源があるように思えます。貴地の皆様をはじめ、私の講演を聴いていただいた方々に深く感謝しております。
当日、お待ちしております。まことに楽しみです。
紀田順一郎


北島町立図書館では、紀田先生の受賞を記念して《紀田順一郎氏と推理作家協会賞に関する本》という特別展示を6月27日から7月末まで行なった。図書館が所蔵している先生の著作約50冊と日本推理作家協会賞受賞作約80冊を展示し、パネルに『幻想と怪奇の時代』の書影や紀田先生が2005年に当館で講演されたときの記念写真などを謹んで掲示した。この特別展示の記事が6月28日付け「徳島新聞」地方面に掲載された(別掲)。その記事の拡大コピーをファクシミリで紀田先生にお送りするとまたもや間髪いれず、先生から電子書簡のお礼状が届いた。下に転載する。


【紀田順一郎先生→小西昌幸宛て電子書簡 2008年6月29日】

小西昌幸様
貴館に小生の特設コーナーを設けていただいた由、お送りいただいた新聞報道にて知りました。たいへん名誉な、ありがたいことです。徳島の読者の方々に読まれ、親しんでいただく有力な契機となるでしょう。このうえない幸せを覚えます。
思えば、半世紀前の資料が出てきたのと丁度同じタイミングで、小西さんから講演ご依頼がありました。ためらいなく、幻想怪奇文学というテーマを申し上げました。これもご縁でしょうし、従来からのつながりが作用していたともいえるでしょう。むかしの同人時代の写真など、お恥ずかしいものですが、現代のケータイ文学時代との相違を感じ取っていただければ、何程かの意義はあろうかと思っております。文学活動が、人間関係が主体となっていた時代があってこそ、幻想文学も今日のように射程距離が長く、裾野の広がりも生じたのだと思います。
とりあえず、御礼まで。
紀田順一郎


6月30日(月)午後6時から、新橋の第一ホテル東京、ラ・ローズの間で《第61回日本推理作家協会賞贈呈式》があった。400人ものプロの作家や編集者が集まり、有名人で溢れている。私は、会場の片隅で木村氏とカメラのシャッターを押し続けた。「よお、元気かい」、肩をたたかれたのでふと見ると出版芸術社の原田裕社長だった。相変わらずダンディだ。山前譲さんや辻真先先生や脚本家の桂千穂さんがいる。辻先生と話し込む木村氏。8時半から銀座国際ホテル地下のザ・ワインバーで2次会《紀田順一郎さんの日本推理作家協会賞受賞を祝う会》があるので、フィルムを残しておこうと思っていたのだが、紀田先生と著名作家の方々とのツーショットが続くので殆どフィルムを使い切ってしまった。2次会は三十数名が集まった。私の左隣は東雅夫氏、その隣は日下三蔵氏だった。正面に推理作家協会理事長の大沢在昌さんがお座りになったので緊張した。私も、挨拶をすることになり、先生の受賞を町として大変喜んでいるという趣旨のことを述べた。徳間書店『SFジャパン』の編集者氏と、池田憲章氏にちゃんと仕事をさせないといけないですねえというような話をして夜がふけていった。と、ここまで書いてもはや紙幅がない。紀田先生のますますのご健勝を祈り、つたない文章を閉じることにしたい。先生、本当におめでとうございました。

(2008・08・02脱稿)

徳島新聞2008年(平成20年)6月28日記事切り抜き

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