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文化ジャーナル(平成24年2月号)

文化ジャーナル2月号

東(ひがし)雅夫氏講演会にご注目下さい
2012年2月26日遠野物語と怪談の時代 北島町創世ホール(徳島)

長谷邦夫 ながたに・くにお マンガ家、大学講師(マンガ論)、栃木県在住

小西昌幸 創世ホール企画広報担当

昨(2011)年2月、当館ゆかりの遠藤ミチロウさんの還暦ライヴをお世話させていただいた(会場は鳴門市ターナーカフェ)。その約ひと月後、3月11日に東日本大震災が発生した。遠藤さんは福島県二本松市のご出身であり、その後8月15日に福島市内での壮大な野外イベント「フェスティバル FUKUSHIMA!」に中心的に関わり、1万3千人を集められたことはご承知の通りだ。

当館としても、平成23年度は《東北連帯支援》と《怪談》の催しを意識的に開催してきた1年間だった。《東北連帯》は当然として、公立文化施設で《怪談》をもうひとつのメインに掲げることについて違和感を覚える方もおいでになるかもしれないが、何ら奇をてらったものではない。むしろ、腰を据えた必然的な取り組みとして位置づけられる。詳細は「文化ジャーナル」2011年7月号に書いた「怪談イベントへの視座」をご参照願いたい。

参考のために今年度当館が関わった東北連帯・怪談系統の催しの足跡を列挙しておく(敬称略。予定及び貸し館事業も含む)。

  • 2011年7月2日(土)◎森優子・あわ工芸座ほか出演、鈴木之彦脚本演出/朗読芝居・小泉八雲「怪談」+人形語り「牡丹灯籠」
  • 7月3日(日)◎東雅夫、宇佐美まこと、松村進吉、山下博之/「ふるさと怪談トークライブin徳島」
  • 7月23日(土)◎鴨島鳳翔太鼓、亀本美砂、山上明山、ささ連、都築麗子、阿波木遇箱廻しを復活する会/東北応援・チャリティ公演「大地のうた」
  • 10月15日(土)◎堀内圭三ハッピー・コンサート
  • 11月26日(土)◎蛭子山ホームズ、クリーミー・パウダーバンドほか/東日本大震災チャリティー・フェスティバル〔町社会福祉協議会主催〕
  • 2012年1月14日(土)◎創世ホール名画鑑賞会?「チェルノブイリ・ハート」
  • 2月11日(土・祝)◎笑福亭たま・旭堂南湖二人会(6)/落語「皿屋敷」、講談「小夜衣(さよぎぬ)草紙」
  • 2月14日(火)◎遠藤ミチロウ/福島復興・ニッポン巡礼ライヴin徳島
  • 2月26日(日)◎東雅夫講演会/『遠野物語と怪談の時代』
  • 3月4日(日)◎Atoa(アトア)、鴨島鳳翔太鼓ほか/「大地のうた2」

別のところにも書いたが、7月2日の「朗読芝居・小泉八雲『怪談』」が、まず決まっていた。そこに、みちのく怪談(東雅夫さんたちが提唱している東北の文芸復興の取り組み)支援のための「ふるさと怪談トークライブ」が呼びかけられ、当館も手を挙げた。そして翌3日の「ふるさと怪談トークライブin徳島」として実現した。その時点ですでに、東さんの講演会も決定していた(『遠野物語と怪談の時代』の日本推理作家協会賞〔評論その他の部門〕受賞が弾みになった)。そんなわけで今年度の当館の主要な企画は、4月下旬から5月初めにかけておおむね確定していたのだ。

そして1月に開く予定だった、笑福亭たまさんと旭堂南湖さんの「二人会」が出演者のスケジュールの関係で2月にずれ込んで、11日開催ということになって、そうこうするうちに遠藤ミチロウさんから電話があり、14日ライヴ開催と決まった(私の独断でタイトルを「福島復興★ニッポン巡礼ライヴ」と命名)。2月は半月間に重要な催しを連続開催することになったわけだ。これらの日程が決まったのは、昨年秋の数日間の出来事である。ミチロウさんのライヴは福島復興・被災地連帯の催しとして位置づけ、「たま・南湖二人会」には演目に「怪談」ネタを入れていただくことで、それぞれ東さん講演会に連動させることにした。

続いて2月24日に江戸落語の入船亭遊一さんの「ひとり会」が入った。こちらは、四国大学の須藤茂樹さん(元徳島城博物館学芸員)のお世話によるもので、新年早々に決まった。須藤さん経由で、遊一さんにも「怪談」ネタを一つ入れていただくようリクエストしてある。なんとか実現すれば嬉しい。

「東北連帯支援」「怪談文芸探求」という2大テーマの結節点となるのが、言うまでもなく2月26日の東さん講演会である。この催しには、遠野市立博物館(岩手県)の特別協賛をいただいている。同館の学芸員の方にお聞きしたところでは、遠野市は市庁舎が全壊したのだという。四国は、いつ南海地震が来てもおかしくないと言われ続けており、東日本大震災は他人ごとではないのだ。

いつものように図書館カウンター前のスペースでは、講演会の関連資料展示を行なっている(2月1日から講演会終了まで)。《文豪怪談傑作選》18巻(ちくま文庫)や『遠野物語と怪談の時代』(角川学芸出版)、『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』(学研新書)など東雅夫さんの編著書、柳田國男さんの著作や資料、民俗学資料、南方熊楠資料、怪奇幻想小説や実話怪談など、約170冊を展示した。ガラス・ケースには東さんが編集長を務めた『幻想文学』全号(67冊)などを並べた。

2009年2月、当館は松居竜五さんを講師に招き、講演会「古今東西の知識の森へ~南方熊楠の世界」を開いた(参集者2百名超)。南方熊楠と柳田國男は同時代を生きた人であり、日本民俗学に巨歩を刻んだ人たちであることは言うまでもない。後年編まれた往復書簡集もある。従って今回の講演会は、熊楠翁顕彰講演会の系譜としても位置付けることができる。

2月26日の会場ロビーでは、講演テキストとして関連書籍3点を販売することになっている(『遠野物語と怪談の時代』『文豪怪談傑作選・柳田國男集 幽冥談』『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』)。そして、東北の出版文化を担う仙台の版元・荒蝦夷(あらえみし)の書物も遠野関係中心に数点扱わせていただく予定である。

昨年の池田憲章氏講演会(「脚本家・金城哲夫」)では、書籍資料購入者への特典として抽選で特撮リボルテック(二十体)が当たるスピードくじを作り大好評を博したのだが、今年もプレゼントを考えた。

思案の末、今回は『幻想文学』37号、63号、66号が資料購入者に抽選で当たるようにした(計12点)。細かなことは紙幅の関係で書かないが、これは、アトリエOCTA(『幻想文学』版元)さん(=石堂藍さん)のご厚意によるものであり、紀田順一郎先生の講演会「幻想書林に分け入って」(2005年10月、創世ホール)にまでさかのぼる熱い友情に基づくものである。

そして、この話を徳島市在住の実話怪談作家・松村進吉さんにお伝えしたら、プレゼント用に氏の著作も数点ご提供いただけることになった。ありがたいことである。

私が東さんと初めてお会いしたのは、2001年11月25日、(三好市)山城町のこなきじじい石像除幕式の時だった。その時は確か『別冊幻想文学・澁澤龍彦クロニクル』か何かにサインをいただいたと思う。その後、私が副会長をしている海野十三の会の主催により当館2階ハイビジョン・シアターで東さんにご講演いただいた(演題「海野十三とパルプホラーの時代」、2006年5月14日)。この講演会の時は東さんは直前に帯状疱疹を発症されていて、実はお身体の具合があまり良くなかったのだが、立派に講師を務められた。その翌日、徳島市内の2つの海野十三碑やユニークな古書店をご案内したことなど、今となっては懐かしい思い出だ。

その後も東さんとは、紀田順一郎先生の推理作家協会賞授賞式の2次会でご一緒したことがあった。隣には日下三蔵氏がいた。会うたびしみじみ思うのは、そのお人柄の良さだ。今年の7月に当館は、坂田明トリオの演奏会をすることに確定したのだが、坂田さんは音楽家の心構えで大切なこととして「一に人格、二に年輪、三、四がなくて五に勝ち負け」とおっしゃっている。我らの東さんは人柄が良い上に男前で、若い頃の写真を拝見すると大層美青年なのだった。

東さんは現在、幻想文学や怪奇小説、怪談文芸の研究ではトップ・ランナーの位置にいる。怪談専門誌『幽』の編集長、怪奇幻想文学アンソロジーの編纂、文庫解説や評論、そのほか夏のNHKの深夜の怪談番組の監修のお仕事などもあり、多忙を極めた日々を送っている。常に5つぐらいの企画が同時進行しているのではないかと思う。

当館は、第1回と10回の講演会で紀田順一郎先生、第3回で種村季弘先生を招いた。言うまでもなくお二人は怪奇幻想文学探求の分野における大先輩である。東さんも私もそれら先人のお仕事を仰ぎ見ながら、読書に浸り後に続いた世代である。そして私見では、東さんは紀田、種村の遺伝子のほか、平井呈一や澁澤龍彦の怪奇幻想遺伝子も正統的に継承しておられるのである。だから私は、そんな東雅夫氏を自分の企画で創世ホールにお招きできることを、誇りに思う。心ある皆さん、2月26日(日)午後2時半、北島町立創世ホールに多数ご参集下さい。

(2012・02・04脱稿/文中一部敬称略/文責=北島町立図書館・創世ホール館長小西昌幸)

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