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文化ジャーナル(平成26年8月号)

文化ジャーナル8月号

新刊情報
池田憲章『「ゴジラ」99の真実(ホント)』

  • 創世ホールとなじみの深いSF研究家・池田憲章氏待望の書き下ろし単行本が登場した。一見すると、ひと昔前によく見かけた『○×△の謎』といったアニメ研究書の類の軽いサブカルチャー読み物と思われるかも知れないが、みくびるととんでもないことになる。
  • 本書は、表面的・形式的にはそれらの系譜に連なると見せつつ、その資料性の高さと正確さ、硬質な精神と手応えにおいて類書とは無限の径庭を隔てたものである。いわば類書をすべて振り払い、極北にそびえ立つ一個の巨大な壁。そんな内容だ。志の高さ、目指す地平が違うのだ。実に幅広く深く重たいのだ。
  • 前書きからして筆者などには激しく心揺さぶってやまないものがある。池田氏や竹内博氏が結成した伝説の特撮愛好者の団体《怪獣倶楽部》のメンバーの名と銘々の得意分野(探究テーマ)が語られ、40年の歳月を背負った仲間たち(数名は故人)の思い出と、池田氏の「ゴジラ」と日本特撮への万感込めた思いが綴られているのである。私などにはこれが誠に泣かせるのである。
  • 池田憲章氏は、たくさんの文章を発表してきた人だが、その長い経歴の中に単独の著作は殆ど見当たらない。特撮雑誌やアニメ雑誌の連載、共著書や監修書、写真資料集の編集などの仕事は多いが、単独の本格評論集は本書が初めてのものとなる。本書は基本的には見開き2頁で1項目を執筆し、99のゴジラに関する様々な考察を綴るという構成になっている。
  • 凄いのが、すべて一次資料というか生の証言記録によっているということだ。池田氏が竹内博氏と一緒に本多猪四郎監督や渡辺明特撮美術監督や伊福部昭氏に取材したときのテープなどをおこして記事にしているのだから、迫力と重み、価値が類書とは根本から違うのである。
  • 映画は集団で作るものなので、多くの職人たちが知恵と工夫を出し合って編み上げ、よい映画作品として結実させるために努力をする。本書には、円谷英二を支えた人たちの重要な仕事が克明に記されている。
  • もっともっと池田憲章の本が読みたい。彼の文章、彼の語り口ならA4判2段組500頁位ものを5冊ぐらい読んでも飽きることはないと思う。ほかにも「実相寺昭雄を追って」という『コミックリュウ』の連載も単行本化してほしい。とにかく日本社会というか、世の中の心ある出版社や編集者は、もっともっと池田憲章氏の本を作るべし。

◆池田憲章『ゴジラ99の真実(ホント) 怪獣博士の白熱講座』徳間書店、2014年7月31日初版発行、新書判・224頁。本体920円+税。

牧眞司編『柴野拓美SF評論集』

  • 2010年1月16日に惜しまれながら世を去った柴野拓美氏(享年83)は、日本で最も古く、最も多くのプロ作家を生んだことで知られるSF同人誌『宇宙塵(うちゅうじん)』の代表を務めた人である。本書は、その柴野さんの集大成的評論集。我が国のSF愛好家が待ち望んだものだ。私は柴野さんのファンなので、たくさんの場所に書かれた文章をいつか1冊にまとめた形で読みたいと願っていたのだが、その希望がかなった。創世ホールで1999年10月17日に柴野さんの講演会を開いた時、私はたくさん柴野さんから資料をいただいた。私は柴野さんのような人を尊敬してやまないので、その旨お伝えしていたから、小西が喜びそうなもの―特にご自身のクロニクルに連なるようなもの―をまとめてくださったのだ。その中には、児童文学の専門誌や神奈川県の文化関係誌などもあった。それらの論考も本書で読める。
  • 柴野さんは、ご自身が編集者であり、翻訳家であるため、自らの評論集刊行については生前あまり考えておられなかったようだ。だが、そういう控えめな(謙虚な)人ほど良い仕事をしているというのが、最近私が実感していることなので、本書登場は本当に喜ばしい。
  • 『宇宙塵』に発表されたエッセイ「コンピュータ時代の選挙と議会」も収録されている。これは、平たく言えば国政選挙において、全国各地の投票率を大きく加味して当選議員数を案分してはどうかという問題提起である(これは私が乱暴に要約しているのであって、柴野論文自体は非常に緻密に書かれている)。1票の格差問題の議論に関して、単純な人口比率のみで議員数を配分するのはおかしいのではないか、という見解があってもよいような気がする。人口だけの比較でなく投票率を加味すべきではないか。都会の人たちは、1票の格差がこんなにあると人口減少している田舎に向かって訴えるよりも、自分の足元の投票率を上げることを考えてみよ、大多数の人が投票に行っていないのだから(大切な選挙権行使を怠っているのだから)、議員の数はそれに比例させた方が実態的なのではないかということを、一度私たちは真剣に考えてみる必要がありはしないか。
  • 神奈川県二宮町のご自宅を訪問したときに、駅近くのお店でオムライスをごちそうになったことなどは、以前書いたことがあるが、上記の選挙制度問題について「私は昔選挙管理委員会の事務局の仕事をしていたので、あの論考はすごくよく理解できます」という私の意見に対して柴野さんは「そうでしょ。あの方法しかないと思うんですよ」と述べたのだった。
  • 柴野さんの残した膨大な資料やエッセイを読み取り、まとめあげた牧眞司氏のご労苦に心から感謝しておきたい。あとがきには、本書が好評なら世界のSF大会のレポートなどをまとめた続刊の可能性もあると記されている。こうなったら、今回未収録の文庫解説などもまとめて、続刊にぶち込んで欲しい。私は、柴野さんの本を並べて、なでたりさすったりしながら余生を送りたい。

◆柴野拓美著、牧眞司編『柴野拓美SF評論集 理性と自走性――黎明より』東京創元社、2014年4月30日初版発行、四六判上製・664頁。本体3700円+税。

トピックス★「ゴジラ」と伊福部昭特別展示

  • 北島町立図書館1階カウンター前のスペースで、ゴジラ生誕60年・伊福部昭生誕100年・新作「ゴジラ」公開を記念して特別展示をしています。6月号でも板野町の三好信司さんのコレクション展示と関連付けて書きましたが、今年は、ゴジラ第1作とその音楽を担当した伊福部昭さんの大きな節目の年に当たります。ここ数か月、新聞各紙や、テレビ番組でも大きな話題になっていますから、目にした人も多いことでしょう。ガラス・ケースには、ここ30年ほどに様々な版元から刊行された香山滋原作版『小説ゴジラ』(奇想天外社版、大和書房版、小学館スーパークエスト文庫版、ちくま文庫版)、LP版「伊福部昭映画音楽全集」、東宝レコードのLP「伊福部昭の世界」、木部与巴仁氏や小林淳氏の伊福部研究書、新作ゴジラの資料などをたくさん展示しました。
  • ガラス・ケースの上には、伊福部昭さん関係のCD約30点(不気味社CD含む)、ゴジラや特撮写真集、伊福部さんの研究書など書籍資料約40点を展示しています。これらは手にとってご覧いただけます。パネルボードには、ハリウッド版新作「ゴジラ」のポスター(シネマサンシャイン北島ご提供)や2004年の「伊福部昭卒寿記念祭」の時のチラシや当日プログラム、「ゴジラ」と伊福部昭さんについての新聞資料などを掲示しました。
  • 掲示物などを熟読すると、「ゴジラ」と伊福部昭の関係、創世ホールと伊福部昭の関係、北島町立図書館・創世ホールでこの展示をする必然性などが理解できる仕組みです。ハリウッドなどと比較すると誠に小さな、蟻粒ほどのささやかな企画ですが、何らかの参考にはなるはずです。ぜひご覧になってください。(2014年8月14日脱稿)

文責=小西昌幸(北島町教育委員会事務局長)

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